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 里桃の質問に、美少女が一瞬だけ躊躇い答えた。
「私達は鬼よ」
「姫様!」
 即座に少年が非難の声を上げる。三便宝
「何馬鹿正直に答えちゃってんですか!? 分かってます? あいつ“桃太郎”なんですよ?」
「馬鹿とは何よ! 分かってるに決まってるでしょう!?」
 美少女は凄い形相で叫んだあと、一呼吸入れて落ち着いた。
「……言ったって言わなくたって状況は変わりないわ。“桃太郎”がここにいるということは、私達の住処が見つかったってことだもの」
 そうでしょう? と、美少女は静かで鋭い眼差しを里桃に向けた。
 対する里桃は落ち着いた様子で美少女を見返していたが、その瞳には愉悦が入り混じっている。
「その通りだ。とはいえ、まさかこんなに早く見つけられるとは思わなかったがな」
 言って、里桃はカチャリと刀の刃先を朔に向ける。
「さて、お前達が鬼だと言うならその女と一緒に退治することになるが……どうする?」
 どうするも何も、大人しく退治されるわけなど無い。
 そんなことは分かり切っているだろうに里桃は聞く、どうする? と。
「ちぇ……こいつ、楽しんでいやがる」
 口調はそのままだが、幾分悔しさを含ませた声音で少年は呟いた。
 少年の言葉に、美少女は自嘲を含んだ笑みを浮かべる。
「見逃しては……くれないのよね?」
 聞くだけ無駄だろうと思われる言葉。
 目の前の男は鬼を退治するために生まれ、育てられてきた男だ。
 今この瞬間。この絶好のチャンスを逃すわけがなかった。
 それでも、勝ち目のない争いをするよりは生きる確率のある道を模索する。そうするしかなかった。
 だがきっと無駄なことだろう。美少女はそう思って自嘲していたのだが……。
 カチャ……
 意外にも朔に向けられていた刀が下ろされる。
 そのまま銀に輝いていた刃が鞘に隠れた。
 その里桃の行為は他の三人が考えてもいなかったもので、美少女も少年も、朔も目をまん丸に開いて里桃を見ていた。
「何をそんなに驚いている? これが望みだったんだろう?」
 不敵な笑みを浮かべ言った言葉は、どこか嘲笑にも取れる。
 そんな里桃をまだ信用出来ていない美少女と少年は、朔を庇いつつ戦闘体勢を崩さない。
 だが、里桃はそのまま背を向けこの場から去っていく。
 三人が三人とも、信じられない面持ちでその背中を見つめていた。
 去ったと見せかけて襲ってくるかもしれない。
 自尊心の高そうな里桃がそんな真似をするとは思えなかったが、万が一ということがある。
 だが、万が一は起こらなかった。
 里桃の姿が見えなくなってしばらく。
 ずっと緊迫した雰囲気でその場を沈黙が支配していたが、ゆっくりと美少女が沈黙を破った。
「……本当に、いなくなった?」
「気配は、無くなりましたね……」
 少年の答えに、場の空気がフッと軽くなる。
 里桃は本当に見逃してくれた。
 理由は分からないが、それは確からしい。
 初めに襲ってきた二人の男。里桃や、目の前にいる美少女と少年。目まぐるしく起きた出来事に、朔はまだついていけなかった。
 事情が分からない。彼らが何者なのか分からない。
 だが、一つだけ分かることがある。
(私、助かったんだ……)
 助けてくれた美少女と少年。彼等は自分に危害を加える存在ではない。
 それだけは理解出来たから。
 そうして、朔はやっと心の底から安堵する。
 同時に体の力が抜け崩れ落ち、お腹と体の痛みから意識が遠のいた。
「ちょっと、大丈夫!?」
 美少女の心配そうな声を最後に、朔の意識は途切れる。
 今日起こったことは、これから始まる波乱に満ちた運命の序章にしか過ぎないことなど、知りもせずに……。

 はじまりの日。
 この日は朔という少女が、他人より遅めに大人になった日であった。巨人倍増

 


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気がつくとまた悲しそうな顔をしている。


駄目だなと呟きながら、勢いよく出した水で顔を洗い、鏡に向かって無理矢理笑顔をつくった。

 

-半年前。


『もう、別れよ?』


あまりに突然過ぎて、君の発した言葉の意味が一瞬わからなかった。


…別れ?

絶對高潮

 

言葉の意味を理解した途端、目の前が真っ暗になった。

 

「…な、なんで?」

やっと口にした言葉は在り来りなものだった。

 

君は俯きながらごめんと呟いた。

呆然とする俺に君は背を向け、靴を履き、扉を開けようとした。

 

「…待って!!」

『…。』


「なんで…行くなよ…」


出て行こうとする、君の手を咄嗟に掴んで引き止める。

 

 

久々に触れた君の手は以前より少し痩せたような気がした。

 


「どうして…?」

 

 

『…どうしてって…』


「…。」

 

『も、もう無理なの。ごめんなさい。』

 

掴んだ右手はするりと俺の手の中から抜けた。

 

 

君は振り返らずに去って行った。



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